"98.09.08"Issue
第5回 奥多摩評技会が開催
伊東レーシング,涙の惜敗
パーツ・チョイスのミスから完走ならず

 9月5日から6日にかけ,第5回奥多摩評技会が開催された。これはILMA島関連施設を初めとする各研究機関が日頃の研究成果を発表し合う祭典で年数回,不定期に行われている。今回は事前式典として,研究者全員による富士総合火力演習見学の後,オクタマ島に場所を移して行われた。目玉となっていた新サーキットレースは注目されていた伊東レーシングでパーツチョイスのミスが起き,リタイア。ILMA-MRCの不戦勝というあっけない幕切れとなった。

 富士総合火力演習の見学は各研究機関の情報収集目的で行われた。いくつかの研究機関ではすでに恒例行事となっていたが,今回は機会に恵まれ,全体での見学となった。各機関は持ち前の記録装置により静止画像を合計約300枚,デジタル動画数時間分の資料を収集した。右の写真はその一部。

 奥多摩評技会はこの日,夜7時より開催となった。伊東レーシングは本社への新型受像器導入のために1時間遅れで合流。各社の技術展示が先行した関係で,レース開催は午前2時にずれ込んだ。見学会の関係で,ほとんど徹夜状態の関係者も多く,伊東レーシングとILMA-MRCによる無制限クラスの決戦が行われた。


ベールを脱いだ伊東レーシングの新マシン
 伊東レーシングが今回持ち込んだワークスマシンは2台。ディスプレイ型と実走型にそれぞれセッティングされており,技術力の厚さを伺わせた。どちらも実車同様の塗料が採用されており,塗膜強度も高くレース向きと言える。伊東レーシングはレーシング・コンストラクターとしての日は浅いが,モビルスーツの量産を得意とした重機メーカー,アナハイム保土ヶ谷が前身。カッターとピンバイス,筆塗りというわずかな工作機械でここまでのマシンを仕上げてきた。

 今回の対抗馬として注目されていたILMA-MRCは結局新型車を一台も間に合わせられないという期待外れの状態。開発部長は「ILMA島は月末から翌月初めに暴風雨に襲われ,作業がほとんどできなかった」と歯切れの悪いコメント。開発結果は今後の報道に持ち越されることになりそうだ。

 レース自体は,実にあっけなく終了した。結果はILMA-MRCの不戦勝。伊東レーシングがチョイスしたアルミ製のダウンスラストを発生するバンパーが直線主体のオクタマ・サーキットと合わず,ローラーを破損,リタイアとなった。新型立体交差もコース下のマシンへの大きな負荷となったようだが,走行時間が短かったため,原因の特定は難しい。オクタマサーキット運営事務局では翌朝,原因が判明するまで新コースを当面走行禁止とする旨を発表している。  伊東レーシングによれば「マシンへの過信から予備パーツの準備を怠ってしまったのが敗因。次回は万全の準備で望む」としている。

デカール+ラッカー,驚嘆の新技術発表さる
 このほかにもレーシングカー関連ではポルシェ935の展示が行われ,従来難しいとされていた,デカール貼り付け時のラッカー厚塗り塗装を成功させた作品が展示された。わずか2回の塗装でデカール段差をほぼ消すことに成功。1回当たりに相当の厚塗りをしていることになる。従来ラッカーでの塗装はデカールを浸食するため,厚塗りは不可能とされている。プロユースのクリアを使用したとのことだが,詳細は不明だ。  かつてOPELカリブラで同じ問題に突き当たったことのあるILMA-MRCでは「技術的には不可能とされていたもの。今後の研究テーマの方針に影響をもたらす重大な成果だ」と驚きの色を隠せない。

微細加工の粋を集めた兵器群も展示
 さらに,今回のテーマにふさわしくミリタリー系の技術出展が6作品も展示された。73または76分の1という高スケールながら,微細加工技術を駆使し,周囲の驚嘆を集めた。火力演習のあとだけに,ILMA島内の陸上戦略技術研究所では「我々の戦車製作の予算獲得に心強い追い風となった」とコメントしている。

 次回奥多摩大会は年内と仮目標が定められた。現在,次回開催のテーマ確定に向けて各機関は早くも基礎研究を開始。現在「車輪以外で動くモノ競争」や「パチもんミニ四駆大会」などがテーマ候補として上がっている。