"00.01.25"Issue

旗艦ジムニー久々の大修理
プロペラシャフトを降ろす
輪留めの甘さからトラブル発生,問われる整備場問題

 ILMA島巡航艦隊の旗艦ジムニーが久々の大修理を受けた。今回の修繕箇所はプロペラシャフトの継ぎ手をカバーするゴム製のブーツ。ブレーキ類の保守点検中にゴムが劣化して割れているのが発見され,急遽交換を行うこととなった。

 同作業は始まる前から波乱含みの展開となった。破損個所の発見は,ブレーキの保守点検作業中。発見は早かったようで,グリスは飛び散っているものの,錆びなどはまだ発生していなかった。パーツの購入のため急遽出航となったが,パンタジャッキの片づけを忘れ,タイヤで挽きつぶすというトラブルが発生。ブーツ代300円に対し,車載パンタ4000円という痛い出費となる。そして,工賃の予算を失ったILMA艦隊は,最近近隣に建設されたコイン式整備蔽の停泊スペースにて交換作業を行うことを決定した。

ネジは外れたがシャフト外れず
 ブーツの交換は手順的には実に簡単だ。プロペラシャフトはミッションに直結するセンターブレーキドラムとデフギアの間に位置する。そしてプロペラシャフト自体は両端がユニバーサル・ジョイント,中央にスプラインと呼ばれる伸縮する継ぎ手という構成だ。よって,ブレーキドラム側の取り付け部でシャフトを切り離し,片側だけ降ろした状態で,スプラインを引き抜けば,ブーツの交換が可能となる。

 第一の関門はまずこのシャフトの切り離しだ。ユニバーサルジョイントとブレーキドラムはネジ4本で止まっているだけだが,シャフトのセンター部分には軸ブレを防ぐための深い噛み合わせがある。真っ直ぐに相当な力で引き抜く必要があるが,ユニバーサルジョイントが首を振るため,てこを懸けようとすると傾いて引っかかってしまい,作業はかなり手間取った。

スプラインの長さ,精度に感嘆
 作業が始まって30分後,ようやくブレーキドラム側の分解が終わり,プロペラシャフトを降ろす重たい音がアスファルトに響いた。早速スプラインの引き抜きが行われる。

 錆の回った古いパーツにもかかわらず,スプラインはグリスにしっかり包まれ,磨きたてのような鈍い銀色の素肌を見せた。引き抜く際の抵抗はピストンの如く実に一様で,抜ききった瞬間にグリスをかき分けて空気が入る「ヌポン」という形容しがたい音がした。トラブル発見時に活躍した安いグリスが用意されていたが,スプラインの精度に恐れをなしたILMA島整備班は,埃が付く前に大急ぎでブーツを交換し,再びプロペラシャフトを組み立てた。

まさかのトラブル途方に暮れる整備員
 そしてトラブルの本番が始まった。プロペラシャフトをブレーキドラムに組み付けようとした時,4つのネジ穴の角度が分解時と全く変わっていることが判明したのだ。スプラインの組み付けの際,元の位置に刺さるよう,極力注意したにも関わらずだ。

 現場に焦燥感が走る中,意外な事実が判明した。ILMA島所有の初期型ターボジムニーはサイドブレーキに,センターブレーキドラムを採用している最後のジムニーだ。それ以降のジムニーでは後輪のブレーキを直接ワイヤーで引くので問題ないのだが,センターブレーキドラムでは,プロペラシャフトを切り離してしまうと,サイドブレーキが効かない状態になってしまうのだ。

 もちろん,ジムニー所有歴の長いILMA艦隊ではこのことを事前に予知しており,輪留めや四輪駆動状態での停車措置(こうしておくとサイドブレーキで前輪もロックされる)を行っていた。だが,輪留めされたタイヤがちょっと変形だけで,プロペラシャフトの角度は大きく動いてしまうことがトラブルの発生を持って判明したのだった。

 対策は困難を極めた。仰向けで車の下に潜ったまま,右手で右車輪を押し,左手でプロペラシャフトを抱え,ネジの位置合わせをする。角度が出たところで,左手のプロペラシャフトを降ろし,その手で右後輪を押さえ,空いた右手で輪留めをさらに押し込む,という作業を何度も行い,ようやくのことで初期位置を回復し,プロペラシャフトは再びボルトで固定された。

 かくして作業は終了し,ジムニーは当日の試運転,23日に行われた高速巡航試験をクリア,修理の完了が宣言された。過去のマフラー修理などと比べて,パーツに常に応力がかかっている駆動系の修理には相当の慎重さが必要であることが,ILMA島艦隊整備班に重要な教訓として残った。また,整備場で完全な水平が得られないことも今後の問題として議論を呼びそうだ。

 なお,今回の整備に伴い,整備員1名が全治三日の筋肉痛を負っている。重たいプロペラシャフトを長時間左手一本で支え続けたためである。